丁重な仕込みがなされた良質な鶏肉が、備長炭で焼き上げられていく。継ぎ足しのタレと厳選した塩が、肉の旨味を引き出したてる。素材へのこだわりは鶏肉にとどまらない。季節の移ろいを野菜で演出する取り組み、使う塩や油の吟味など、よりよい食材への探求は貪欲だ。この日、旬を迎えていたのは水分をたっぷり含んだカブだった。土作りにこだわる農家から、収穫したその日に届く鮮度抜群なカブは、皮ごと刺身で、長崎県対馬さん浜御塩をつけていただく。パリンッと弾ける食感と、瑞々しさとともにひろがる甘味は、期間限定の楽しみだ。「いい食材を求めて生産者のところへ行くと、市場に出回らない、本当においしい食材のことを教えてくれるんです。それをお店で出して、お客さんに美味しいと喜んでいただくと嬉しいですね。私たち料理人の役目は、そうやって手作りと食べ手をつないでいくことだと考えています。」と、スタッフの近藤大祐さん。お店の名物メニュー「白い唐揚げ」は、シンプルな塩味が好評の絶品だが、下味となる塩使いに、今も試行錯誤を繰り返している。「美味しさの探求に終わりはないですから」という近藤さん。美味しい食材を求め、東奔西走の日は続く。